6月は養蜂にとって一年で最も大切な「勝負の月」です。当園では、養蜂歴の長い師匠・一郎さんから日々の作業を教わりながら、夫婦2人でミツバチと向き合っています。この記事では、師匠の教えをもとに6月の養蜂作業——国産蜂蜜(クリ蜜)の採蜜、女王蜂の更新、そして種蜂を増やすための分割——を実践の言葉そのままにまとめました。これから養蜂を始めたい方、種蜂やミツバチの購入を検討している方の参考になればうれしいです。
この記事を書いた人:夫婦2人で営む小さな養蜂園。ベテラン養蜂家の師匠に学びながら、種蜂・交配用ミツバチの育成と、季節ごとの国産蜂蜜づくりに取り組んでいます。
なぜ6月の養蜂が「勝負」なのか
師匠がくり返し言うのは「6月が勝負になってくる」という言葉です。理由は夏の暑さにあります。7〜8月の猛暑日が続くと、交尾に出るはずのオス蜂が暑さで箱から出られなくなり、交尾率が下がってしまいます。すると良い女王蜂が生まれにくくなり、その影響は群れの勢いとしてはっきり結果に表れます。だからこそ、暑さが本格化する前の6月のうちに、採蜜・女王更新・分割をしっかり進めておくことが、その年の養蜂の成否を分けるのです。
国産蜂蜜「クリ蜜」の採蜜は6月いっぱいが本番
日本ならではの個性的な国産蜂蜜のひとつが、クリ(栗)の花から採れるクリ蜜です。濃い色と独特の香りが特徴で、根強いファンの多い蜂蜜です。
クリの開花と流蜜のタイミング
師匠から「今朝クリの花を見た。あと4〜5日で咲き始める」と連絡が入りました。クリは6月末まで咲き続けるため、6月はまさに採蜜の本番シーズンです。当園のあるエリアはクリの木がたくさんあり、採蜜の条件が揃っています。
少雨は流蜜を止める
ただし、クリ蜜は天候に大きく左右されます。2026年、今年は極端な少雨が続き、巣箱の中の蜜の匂いが一時止まってしまいました。雨が降らないと花が蜜を出さない(流蜜しない)ためです。師匠も「まだ序盤戦。台風や雨のあとに期待したい」と話していました。自然を相手にする養蜂では、こうした天候の波と付き合っていく必要があります。
クリ蜜が採れる地域・採れない地域
注意したいのは、クリ蜜はどこでも採れるわけではないという点です。師匠も「周りにクリの木が無い地域では推奨できない」とはっきり言います。クリ蜜を狙うなら、まず自分の養蜂場の周囲にクリの木がどれだけあるかを確認することが第一歩です。
産卵にブレーキをかけない巣の管理
6月の群れ管理で最も大切なのが、女王蜂の産卵を止めないことです。師匠の指示はシンプルでした。「巣を差し遅れないよう、産卵にブレーキをかけないように巣を入れ続けること」。
産卵が活発な群れは、巣箱があっという間に満杯になります。実際、5月3日に産卵を始めた箱は、ひと月ほどで大箱が満杯になりました。巣がいっぱいになると女王は産卵をやめてしまうため、空いた巣を切らさずに差し続けるのがポイントです。
一方で、新しい女王が産卵を始めた箱や流蜜期の群れは、無理に手を加えず放置でも構いません。「新王産卵の箱には新しい巣を3枚差して、流蜜期は放置。手抜きしても大丈夫」と師匠。作業にメリハリをつけることも、夫婦2人の小規模養蜂を無理なく続けるコツです。
種蜂を増やす「分割」のやり方【師匠直伝】
養蜂で群れ=種蜂を増やす基本が「分割」です。師匠の手順はとても実践的でした。
満杯の箱から週1回の2枚分割
産卵で満杯になった勢いのある箱からは、週に1回、2枚分割を行っていきます。最後のクリの流蜜が始まるこの時期は、一気に分割して群れを増やす絶好のタイミング。「この時期に一気に分割して増やしてください。良い女王ができます」と師匠も勧めます。
新女王の産卵を一気に増やすコツ
ここが師匠ならではのテクニックです。新しい女王が産卵を始めたら、当園では必ず「蓋がけ蜂児巣(もうすぐ蜂が産まれてくる巣)」を1枚差します。
理由はこうです。新女王の箱の中にはまだ幼虫がおらず、女王のエサであるローヤルゼリーがありません。そこへ蜂が産まれ出している巣を入れてやると、世話役の若い蜂が一気に増えてローヤルゼリーが供給され、女王の産卵が急速に伸びるのです。産卵開始から約1か月後に1枚差すのが目安です。
45〜50日後の「2枚分割」が重要ポイント
新しい女王が産卵を始めて45〜50日たったら、次の分割を行います。コツは——産卵したばかりの巣を1枚、別の群れから蜂児巣を1枚、合わせて2枚で分割すること。「2枚ですよ。ここが重要なポイントです」と師匠が念を押すところです。
この手順をくり返していけば、「200〜300箱に増やすことも容易にできる」と師匠は言います。種蜂の増産を目指す方にとって、覚えておきたい王道の方法です。
3年目の女王蜂は「更新」のとき
群れの調子を保つには、女王蜂の世代交代も欠かせません。師匠いわく、3年を越えた女王は更新の時期。採蜜期に産卵が減り、いつのまにか行方不明になって、気づけば箱の中が王台(新女王を育てる房)だらけになり、女王が居なくなってしまうことがあるからです。
そのため当園では、3年目の女王の群れは採蜜用にはせず、交配用(受粉用)などに回します。採蜜には、よほど優秀な女王でないと群れが事故を起こしやすいためです。
猛暑と交尾——良い女王が生まれる条件
前述のとおり、7〜8月の猛暑はオス蜂の交尾行動を妨げ、女王の質を下げます。良い女王を確保したいなら、暑さが本格化する前の6月までに交配と分割を済ませておくのが理想です。「良い女王が生まれたかどうかは、後から結果でわかる」と師匠。だからこそ、前倒しの段取りが効いてきます。
種蜂・国産蜂蜜・交配用ミツバチをお探しの方へ
当園は夫婦2人で営む小さな養蜂園です。師匠の教えを受け継ぎながら、丁寧に育てた種蜂・交配用ミツバチと、季節ごとの国産蜂蜜(クリ蜜など)をご用意しています。ミツバチの購入をご検討の方、養蜂を始めてみたい方は、お気軽にお問い合わせください。
よくある質問(FAQ)
Q. 種蜂はいつ購入するのがいいですか?
群れが勢いよく増える初夏(おおむね5〜6月ごろ)が一つの目安です。新しい女王が産卵を始め、分割で増やしやすい時期にあたります。導入後にすぐ働き始めてもらいやすいため、シーズン序盤の購入がおすすめです。
Q. 国産蜂蜜のクリ蜜にはどんな特徴がありますか?
クリ蜜は色が濃く、コクと独特の香りがある個性派の蜂蜜です。栗の花が咲く6月ごろに採れる季節限定の国産蜂蜜で、産地や天候によって採れる量が大きく変わるのも特徴です。
Q. 交配用ミツバチとは何ですか?
イチゴやメロンなどの作物の受粉(交配)を助けるために導入するミツバチの群れのことです。
Q. 初心者でも分割でミツバチを増やせますか?
はい。本記事で紹介した「満杯の箱から週1回の2枚分割」「新女王の産卵が始まったら蓋がけ蜂児巣を差す」「45〜50日後に2枚で分割」という手順を守れば、初心者の方でも着実に群れを増やせます。まずは無理のない範囲から始めてみてください。
まとめ
6月の養蜂は、クリ蜜(国産蜂蜜)の採蜜と、夏に向けた女王更新・分割が重なる「勝負の月」です。産卵にブレーキをかけない巣の管理を基本に、新女王の育成と分割をテンポよく進めることで、種蜂は大きく増やせます。次回は7月の世話について、師匠の教えとともにお届けします。
