7月の養蜂は、6月とはまったく別の戦いになります。梅雨と猛暑という二つの試練が続けざまにやってきて、対応を間違えると群れは一気に弱ります。今回も師匠の教えをもとに、産卵を止めないエサやり、猛暑がオス蜂と交尾に与える影響、そして良い女王を生むためのオス蜂づくりを、実践の言葉のままお届けします。種蜂を増やしたい方、これからミツバチの購入を考えている方にも役立つ内容です。
※前回の記事はこちら 👉 【6月の養蜂】師匠直伝・種蜂の増やし方と国産クリ蜜の採蜜
エサやりを怠ると、女王の産卵が止まる
師匠が7月の講座でまず強調したのが、エサやりです。「エサやりを怠ると産卵が抑制されます」——これに尽きます。蜜源が途切れる時期に群れがエサ不足になると、女王は産卵にブレーキをかけてしまい、秋に向けた蜂数が伸びません。
点検のたびに必ず与える。蜂がおとなしくなる
師匠のやり方はシンプルで、点検のたびに必ずエサを与えること。エサを与えられている群れは気が立たず、おとなしい蜂になります。作業のしやすさという意味でも、給餌はそのまま安全対策になります。
群れの状態でエサの量を加減する
ただし、どの群れにも同じだけ与えればいいわけではありません。師匠の見立てはこうです。
- 分割した群れ・新王が産卵を始めた群れ……蜂数が少なく、雨続きだと外から蜜を持ち帰れずエサ不足に陥りやすい。しっかり与える。
- 大箱(勢いのある大群)……もともとエサをたくさん持っているので、加減して与える。
つまり「群れの貯蜜量を見てから量を決める」のが基本です。
餓死しかけの群れは「恐るべし」——緊急時の給餌法
怖いのは、大箱なのにエサが尽きて餓死寸前になっている群れです。師匠は「大箱のエサの無い、餓死しそうな箱は恐るべし」と表現します。大群ほど消費も激しく、蜜が切れると崩れるのが早いのです。だからこそ、基本の点検(内検)が何より重要になります。
もしその状態を見つけたら、応急処置として巣に直接たっぷりとエサを与え、そのまま1時間ほど放置します。慌てて触り続けず、蜂が落ち着いて吸い上げる時間を与えてやることが大切です。
猛暑がミツバチの交尾を止める——オス蜂は「扇風機要員」になる
7月半ばから8月末にかけて、当園では分割(群れを増やす作業)を休みます。理由は猛暑です。
オス蜂は交尾に飛ばず、24時間の換気係になる
猛暑になると、交尾飛行に出るはずのオス蜂が箱から飛び出しません。では何をしているかというと、箱の中で羽を動かし、巣内の温度を下げる「扇風機要員」になっているのです。しかも24時間体制で。猛暑の日に箱の中を見れば、その様子がはっきりわかります。
師匠はこう言います。「かわいそうです。オスは交尾のために生まれてきたのに、24時間扇風機になっています。30日で死にます」。交尾のためだけに生きるオス蜂が、その役目を果たせないまま短い一生を終えてしまう。猛暑はそれほど群れの繁殖に影響するということです。
猛暑期の交尾確率は3割程度
この時期に分割しても、交尾確率はおよそ30%程度にまで落ちます。さらに厄介なのは、運よく交尾できたように見えても産卵を始めてすぐに居なくなる女王が出ることです。交尾が不十分だったことが原因と考えられます。
だから分割の最終は「7月上旬」まで
そこで師匠の指示は明快です。梅雨明けの7月半ばごろまでに交尾が終わるよう逆算して分割を計画し、猛暑の分割はしない。分割の最終は7月4日ごろまで。
7月上旬でいったん分割を締め、真夏は群れを維持する期間と割り切る。この見極めが、質の良い女王と丈夫な種蜂につながります。
良い女王を生む「オス蜂づくり」——7月から仕込む
ここからが師匠の養蜂の真骨頂です。9月に再び分割・繁殖を行うために、7月からオス蜂を計画的に作っておきます。
オス蜂は成熟に約1か月かかる
覚えておきたいのが、女王とオス蜂の成熟スピードの違いです。
- 女王蜂……生まれて4〜5日で交尾する
- オス蜂……成熟までおよそ1か月かかる(昔からそう言われています)
この時間差を意識せずに分割だけ進めても、交尾相手となる成熟したオス蜂がいなければ良い女王は生まれません。しかも8月半ばあたりにはオス蜂が少なくなってきます。だから7月のうちにオス巣(オス蜂用の巣)を入れて、9月の繁殖に間に合うように増やしておくのです。
「どのオス蜂と交配させるか」を選ぶ
そしてもう一つ、師匠のこだわりが遺伝の管理です。蜂はオス蜂の遺伝子が強く表れる——だからオス蜂を選ぶことが、群れの質を決めます。
手順はこうです。
- 優秀な群れの中から、体色の黄色いオス蜂が出る箱を選ぶ(1つの蜂場につき2〜3箱)。
- その選んだ箱にオス巣を入れて、オス蜂を意図的に作る。
- それ以外の箱のオス巣は、カッターで切り落とす。
こうして、選んだ数箱のオス蜂以外とは交配させないようにします。すると、生まれてくる女王も体色の黄色い良質なものになっていきます。「誰と交配させるか」まで設計するのが、良い種蜂づくりの土台なのです。
7月の作業まとめ
- 点検のたびに必ず給餌する(産卵を止めないため/蜂もおとなしくなる)
- 分割群・新王群は手厚く、大箱は加減して与える
- 餓死しそうな群れには巣へ直接たっぷり給餌し、1時間ほど放置
- 分割の最終は7月4日ごろ。梅雨明け前に交尾を終わらせる
- 7月半ば〜8月末は分割を休む(猛暑で交尾率が下がるため)
- 優秀群(体色の黄色いオス蜂)を1蜂場2〜3箱選び、オス巣を入れる
- それ以外の箱のオス巣は切り落とす
種蜂・国産蜂蜜・交配用ミツバチをお探しの方へ
当園は夫婦2人で営む小さな養蜂園です。師匠の教えを受け継ぎ、オス蜂の系統まで選んで育てた種蜂・交配用ミツバチと、季節ごとの国産蜂蜜をご用意しています。ミツバチの購入をご検討の方、養蜂を始めてみたい方は、お気軽にお問い合わせください。
よくある質問(FAQ)
Q. 夏にミツバチへエサを与えるのはなぜですか?
夏は蜜源が途切れる時期です。エサが不足すると、女王蜂が産卵を控えてしまい、群れの勢いが落ちるためです。とくに分割したばかりの群れや新しい女王の群れは蜂数が少なく、雨が続くと外から蜜を集められないため、給餌が欠かせません。
Q. 猛暑の時期に分割してはいけないのはなぜですか?
猛暑ではオス蜂が交尾飛行に出ず、巣内の温度を下げる換気役に回ってしまうためです。交尾確率はおよそ30%程度まで下がり、交尾が不十分な女王は産卵開始後まもなく居なくなることもあります。分割は梅雨明け前に終えるのが安全です。
Q. 交配用ミツバチはいつ導入するのがよいですか?
作物の開花時期に合わせて導入するのが基本です。ただし群れの状態は季節に大きく左右されるため、必要な時期が決まっている場合は早めにご相談いただくと、群れの準備をととのえてご案内できます。
まとめ
7月の養蜂は、「エサを切らさない」「猛暑が来る前に分割を終える」「9月に向けてオス蜂を仕込む」——この3つに集約されます。真夏は増やす季節ではなく、次の繁殖期に備えて仕込む季節です。ここで手を抜かないことが、秋の良い女王と丈夫な種蜂につながります。
次回は8月の世話について、師匠の教えとともにお届けします。
